|
というわけで、今回は浅い場所について、もっと考えてみましょう。 前回は天候や海況によって、浅い場所が危険な状態になることを覚えました。今回は、天候に関係なく、圧力の変化が及ぼす危険について考えてみましょう。
圧力の事は、オープンウォーター講習の時にも習った事と思いますが、もう一度復習してみましょう。
いま、私たちが住んでいる陸上には空気があります。その空気にも重さがあって、1気圧と言う事にしてあります。普段は全然重さを感じませんが、それは人間が慣れているからです。なんと!私たちのはるか上空、宇宙にいたるまでの空気が両肩にかかっていると考えるのです。
そして、水の中に入ると、水圧と言うものがかかります。これも同じく、あなたの上にある水がすべて、あなたへ圧力としてかかります。水は、空気よりずっと重たいので、10メートルで1気圧分の圧力がかかります。20メートルの水深で潜っているダイバーには2気圧分の水圧がかかっています。
ここに、落とし穴があるのです。あなたが水深20メートルに潜っている時はあなたの上には何がありますか?ひとつは、海水ですね。もう一つあります。そう、空気です。あなたがダイビングをしている時には、海水からの圧力(水圧)だけでなく、空気の圧力(大気圧)もかかっているのです。
ですから、あなたが水深20メートルでダイビングしている時には、水圧が2気圧、大気圧が1気圧の合計3気圧がかかっているのです。
となると、10メートルでは水圧1と大気圧1で2気圧、30メートルでは同じく3+1で4気圧かかる事になります。これは説明しやすいように名前がついています。人間に絶対かかっている圧力(水圧+大気圧)の事を「絶対圧力」、ダイビング中の水圧だけをさして「ゲージ圧力」と呼びます。
「ゲージ圧力」
なぜこう呼ぶのか詳しく説明すると、こうです。ダイビングの装備には「ゲージ」というものがありますね。ゲージには残圧計や、水深計、コンパスなどがついています。その中でも水深計と言うものは、今自分がどのくらいの深さにいるかを知るためには大切な道具ですね。
この水深計は、(簡単に言うと)水圧だけを感知して今何メートルかを表示してくれます。つまり、水圧がどのくらいかかっているか、水深計(ゲージ)はわかっているという事です。ですから、水圧だけを指す時、ゲージ圧力と呼ぶのです。
さて、本題に戻りましょう。圧力がゆっくり変わるのであれば、空気が膨らんだり縮んだりするスピードもゆっくりですね。ところが、この圧力が急激に変わると、どうなるでしょうか。
そうです。空気もすばやく膨らんだり縮んだりしてしまいます。つまり、人間が対処するスピードを超えてしまう可能性があります。これは、初心者であるほど対処に時間がかかるので、よりいっそうの注意を必要とします。
それでは、上記の事をふまえて、なぜ浅い場所が危険かの説明に移りましょう。
ではまず、あなたが水深10メートルでダイビングをしていたとします。そこから、水面まで帰ってくると、圧力の変化はどのくらいになったでしょうか。「絶対圧力」で考えてみましょう。
水深10メートルでは、絶対圧力は2気圧です。(ゲージ圧1+大気圧1)
水面(0メートル)では、絶対圧力は1気圧です。(ゲージ圧0+大気圧1)
そうすると、2気圧のところから、1気圧のところへ移動するのですから、圧力は半分になるわけです。ということは、空気は2倍に膨らみます。
では次に、水深20メートルから水面に帰ってくるとどうなるでしょうか。
水深20メートルでは、絶対圧力は3気圧です。(ゲージ圧2+大気圧1)
水面(0メートル)では、絶対圧力は1気圧です。(ゲージ圧0+大気圧1)
ということは、3気圧のところから1気圧のところへ移動するのですから、圧力は3分の1、空気は3倍に膨らみます。
さあ、ここからが重要です。では、水深20メートルから水深10メートルへ移動したらどうなるでしょうか。
水深20メートルでは、絶対圧力は3気圧です。(ゲージ圧2+大気圧1)
水深10メートルでは、絶対圧力は2気圧です。(ゲージ圧1+大気圧1)
です。そうです、もうお分かりですね。20メートルから10メートルへ移動すると、圧力は3分の2、空気は1.5倍に膨らみます。以下、表にしてみます。
| 水深 |
移動先の水深 |
圧力の変化 |
空気の変化 |
移動した距離 |
| 10メートル |
0メートル |
半分 |
2倍 |
10メートル |
| 20メートル |
0メートル |
3分の1 |
3倍 |
20メートル |
| 20メートル |
10メートル |
3分の2 |
1.5倍 |
10メートル |
| 30メートル |
20メートル |
4分の3 |
1.3倍 |
10メートル |
あれ?おかしいですね。水深20メートルから10メートルへの移動距離は10メートルですね。同じく、水深10メートルから水面への移動距離も10メートルですね。同じ10メートルの移動なのに、空気の変化が違いますね。
そうです。ここに浅いところのほうが危険な理由が存在するのです。浅いほうの10メートルが、深いほうの10メートルに比べて、空気の体積が変化する度合いが大きいのです。
この事から、空気に関するいくつかの注意しなければならない事が解ります。
ひとつは、B.C.にはいっている空気です。浮上中に、浅くなればなるほどB.C.の空気はどんどん膨らんでいくので、浅いところほど、注意して操作しなければなりません。
もう一つは、やはり体の中にある空気です。肺の中、耳の中の空気も浅いほうが急激な変化を起こします。
さて、いかがでしたか?ちょっと長くなってしまいましたが、浅いところだからと言って気を抜くと恐いということがお解りいただけたでしょうか。今度潜った時にそういうことを感じながら潜ってみると面白いかもしれませんよ。
|